アメリカの動物保護団体でボランティアを学ぶ留学生活(宇田愛臨さんVol.2)
|犬のトレーニングの方法について講師の先生が実演中の様子
■プロフェッショナルなボランティアが活躍するアメリカ社会
–では、次にシアトルでの活動について聞かせてください。現地の動物保護団体で受けていたトレーニングはどのようなものだったのでしょうか?
これが本当にすごかったんです!!
アメリカでは、ボランティアの仕組みがとてもしっかりしていて、「動物の世話のボランティア」「里親になる候補者の接客対応の専門ボランティア」「犬のトレーナーのボランティア」、他にも「写真撮影」「大工仕事」「広報」など専門的に細分化されていました。
また、それぞれのボランティアを育成するシステムも充実していて、私はその中の「犬のトレーナーになるためのトレーニング」を受けていました。
–もう、そこまで行くとボランティアというよりはプロフェッショナルですね。
そうなんですよ、そこが日本とは大きく違っていて、本当にびっくりしました!
–犬のトレーナーになるためのトレーニングは具体的にどのようなものだったのでしょうか?
ボランティア・トレーニングを受けたThe Humane Society
多分、トレーナーというとしつけをイメージする人が多いと思うのですが、私が向こうで学んでいたのは、主に犬のソーシャライゼーション(社会化)についてです。
–ソーシャライゼーションというと?
一言で言うと、「犬が人間の社会になじめるようにトレーニングしていく」という感じです。
例えば、一度捨てられた犬は「1人でお留守番できない」「他の犬やネコに対する攻撃性」「人になれていない」などの理由で人間と一緒に生きていく事が困難になります。
そういう犬に対して社会化を進めていく役目が主になります。
■ボランティアがボランティアを育成する仕組み、そしてその経験がキャリアにも!
–他に、アメリカの動物保護団体ですごいと思った事がありましたか?
はい、私がその他にすごいと思ったのが、ボランティアがボランティアを育成する仕組みです。
–えっ、それはトレーニングプログラムの事ではなく?
それもすごかったのですが、アメリカでは、トレーニングプログラムを受けた人がその専門分野の講師になって、その後の育成プログラムを担当するんです。
つまり、ボランティアの人がボランティアを育成する仕組みがちゃんとできあがっていました。
日本の動物保護団体は、基本的に職員の人が主導となってボランティアの人に何かを指示する形でしたが、向こうでは職員はいなくても回っていて。お金が動いていなくても、人が動く感じでした。
実際にトレーニングプログラムを受けると、知識や経験が増えてきて、プロフェッショナルとして自信がわいてくるので、ボランティアの内容に対して自分も自信を持ち、続けたり教えたりする気持ちが生まれてくるのだと感じました。
–ボランティアがボランティアを育成するスキームが出来上がっているのがすごいですね。なぜ、アメリカではそのような仕組みができたのだと思いますか?
シェルターの保護猫の展示室。(デザインから作成まで全てボランティアが行っていて、ボランティア各人の特技が活かされているそうです。)
私が感じたのがボランティアの浸透度の違いでした。
現地で色んな人の話を聞いていて気づいたのですが、かなりボランティア経験のある人が多かったのが印象的でした。私の通っていた語学学校の先生たちも、全員と言っていいほどボランティアの経験がありました。
あと、社会的な要素も関係していて、アメリカ社会では、ボランティアをする事で、学校の単位になったり、就職などに有利になったり。ただ、そういうのもあると思うのですが、私自身が留学して一番強く感じたのが、ボランティアを通して自分が学ぶ事が多いなぁという事でした。
→【3/3次ページ】シアトルを飛び出し他の州へ!少年院の再犯率をゼロにさせる動物の力とは!?